倉敷古民家オンライン相談

インタビュー

2024.09.03

自社のこだわりと古民家リノベーションの魅力を語る四季彩工務店 経営者

四季彩工務店

代表取締役尾上 和英

倉敷の古民家リノベーション:伝統と現代の融合を目指して

「倉敷古民家」を運営する、四季彩工務店の尾上社長に、なぜ今、古民家リノベーションなのか、その魅力と古民家リノベーションに取り組む意義をお伺いしました。

まず、簡単な自己紹介と御社の成り立ちについて教えてください。

尾上氏(以下、尾上) 私たちの会社は2010年に設立されました。当初は新築住宅の建設を中心に活動していましたが、徐々にリフォームやリノベーションの分野にも取り組むようになりました。

会社設立当初から木材にこだわりがあったのでしょうか?

尾上 もともと自然素材を活用した家づくりにはこだわりがありましたが、設立当初はそこまで「木」に特化していたわけではありません。ただ、以前の仕事で自然素材を使った経験があり、その中で素材としての木材の可能性に気づきました。

木材は使い方次第で様々な表情を見せてくれます。特に、デザイン性を加えた場合の可能性は計り知れません。シンプルで洗練されたデザインの中に、木の温もりや優しさを表現できれば、それはもうアート作品のようなものです。そうした木の魅力を最大限に引き出して作られた空間は、その良さが分かってもらえる方にとっては、心から満足いただけると思います。

木材以外の素材にはどのように向き合っていますか?

尾上 コンクリートや鉄筋などの素材にも美しさがありますし、それらを上手に使うことも好きです。木材に限らず、素材本来の良さを活かすのは、素材の特性に合わせた使い方や、デザインの追求がしっかりとされているかが重要だと思っています。

四季彩工務店のデザインアプローチの特徴を端的に表現すると?

尾上 木材といっても、無垢材をふんだんに使うスタイルを得意とする工務店や、加工しやすいという木の特徴を活かして印象的な北欧デザインを得意とする工務店など、ひとえに木の家といっても、さまざまなアプローチの仕方があります。私は木材をよりシンプルで調和の取れたデザインで使いたいと考えています。木材が主張しすぎず、自然に調和する形でデザインすることが大切だと思っています。

設計事務所と工務店の違いについてお聞かせください。

尾上 設計事務所は高い設計管理費がかかり、自己の作品作りを優先しがちです。一方、工務店は伝統的なやり方に固執しがちですが、私はその両方の良さを活かし、設計とデザインを自分で行うことで、コストパフォーマンスの高いサービスを提供しています。現場を見て自分で考えることをモットーにしています。

古民家リノベーションに特化した理由は何ですか?

尾上 倉敷にはまだ良好な古い家が数多く残っています。しかし、現時点では、古民家リノベーションの事例は少なく、まだまだ活用できる古民家が忘れ去られた存在になっています。例えば、“古民家には価値がある”ということを知らない方も多いのが現状です。特に古民家を相続した場合には、住めるように修繕するのか、老朽化が酷いので解体するのか、売却するのか、その対応に苦労します。そうしたネガティブなイメージを持っている方がまだ多いのが現状です。また、今の時代、古民家は住みにくいのではないかと思われがちですが、今の生活様式に合わせた形で再生することが古民家リノベーションです。ですので、住み心地は現代の家と遜色ありません。

つまり、古民家リノベーションがどういうものかを知っていただければ、人知れず眠っている古民家という地域資源を活かすことができます。これは倉敷という地域に合っていると考えています。住宅だけでなく、店舗やカフェ、オフィスなど多様な用途に対応できるのも、理由の一つです。

古民家リノベーションの魅力や利点について教えてください。

尾上 古民家リノベーションの魅力は、新しいものと古いものを融合させることで価値を高めるところにあります。古いものをただ残すのではなく、現代の要素を加えて再生させることがポイントです。例えば、最近のプロジェクトでは、古い屋根や梁を残しながら、その他の部分を新しくすることで、古いものの良さを引き立て、新しいものとの調和を図っています。当社の事務所のショールームを見ていただくとわかりますが、単なるノスタルジーとは違う、心地よさを感じてもらえると思います。

古材の再利用と新しい価値の創造

古民家リノベーションのもう一つの魅力は、古い材料を新しい価値として再利用することです。例えば、玄関の敷台や縁側の良材を使ったリノベーションは、新しい建材では得られない独特の風合いと価値を生み出します。これにより、古民家の歴史と伝統を現代に蘇らせることができます。

築50年という住宅は一見すると古く感じるかもしれませんが、実は良質な木材がふんだんに使われている可能性があります。築80年以上になると、さらに希少価値の高い木材が使われているケースも増えます。そういう近年ではなかなか手に入らない貴重な木材を使い、職人の技によってリノベーションされた家は「歴史の重み」と「唯一無二の個性」を与えてくれます。

例えば、昔の家の玄関の敷台に使われている一枚板などは、欅などの高級木材が使われていることが多く、現代ではなかなかお目にかかれません。しかし、一般の方にはその価値が分からず、単なる古い板として扱われてしまうことも多いのです。床の板にしても、一見すると価値のないただの板に見えますが、実は良質な木材が使われている可能性があります。

ですから、リノベーションの際には、経験豊富な専門家が木材の状態を丁寧に調査し、それぞれに合った活用方法を提案できる“目利き”が重要となります。敷台に使われている良質な板を削ってキッチンカウンターにしたり、縁側に使われていた木材を床の周りに貼り付けたりすることで、空間全体に温かみと奥行きを与えることができます。

このように、古い住宅には「眠っている宝物」がたくさん隠されています。また、希少価値の高い木材を使用している場合は、資産価値の向上にもつながります。リノベーションによって蘇った家は、中古住宅市場でも高値で評価される可能性が高くなります。

古民家のリノベーションは、単に建物を新しくするだけでなく、歴史を継承し、新たな価値を生み出すものでもあります。

古民家リノベーションならではの課題というのはありますか?

尾上 倉敷には多くの空き家があり、その多くが古民家です。これらの空き家を再利用するためには、単にリノベーションするだけではなく、建築的な知識と専門的な技術が必要です。特に古い家屋を現代の居住空間として再生させるには、耐久性や構造の安全性を確保しつつ、古き良き風情を残すことが求められます。建物の構造材の状況や耐久性、地盤の安定性などを綿密に調査し、それを基にリノベーションの計画を立てることが重要です。

また、古民家は現代の耐震基準を満たしていないことが多いのが現状です。建築基準法に基づく耐震性を確保するためには、耐震診断を行い、必要な補強を施すことが求められます。特に、昭和56年以前に建てられた建物は耐震基準が設けられていなかったため、耐震性が不十分な場合が多く、こうした古民家をリノベーションする際には、土壁や筋交い、モルタルなどを用いた補強を行います。

古民家リノベーションの事例で印象に残った物はありますか?

尾上 上富井の家です。当初は、施主の方が壁と床と天井を取っ払って、柱は残そうとしていましたが、いざ解体してみるとほとんどの柱が腐っており、屋根だけを残して中を全てやり直す必要がありました。しかし、それが逆に良い結果になりました。設計コンペで世界一になったのです。古民家のリノベの可能性を一番感じた案件でした。

倉敷ならではの地域性と社会的意義というものはありますか?

尾上 倉敷には、軒を揃えた伝統的な古民家が数多く残っており、美しい景観を作り出しています。美観地区にある古民家は、倉敷格子や漆喰など特徴的な意匠を取り入れ、歴史を感じさせる佇まいが魅力です。しかし、美観地区の古民家をリノベーションする場合は、「美観地区の景観や歴史的環境を守るための条例」などの規制に注意する必要があります。一方、美観地区から少し外れた地域であれば、これらの条例は適用されません。つまり、美観地区外の古民家は、倉敷という歴史ある街並みの魅力を活かしつつ、より自由にリノベーションすることができる物件であるということです。

古民家リノベーションは、空き家問題の解決や地域の活性化にも貢献することができ、その用途は、お客様の目的によって大きく三つに分けられます。

1つは、居住用です。ご自身で住む場合、歴史を感じられる空間で快適な暮らしを実現できます。例えば、店舗併用住宅として住居部分を確保しつつ、店舗スペースを設けて事業を始めることも可能です。また、ゲストハウスや民泊として倉敷への観光客向けに宿泊施設として運営することもできます。

2つ目は、収益物件です。古民家をリノベーションした住居用の賃貸物件は人気が高く、安定した収入が期待できます。店舗物件として古民家ならではの雰囲気を活かし、カフェや雑貨店などの運営も魅力的です。さらに、近年需要が高まっているワーキングスペースやシェアオフィスの運営も可能です。

3つ目は、不動産として売却する事です。リノベーション済みの古民家は市場価値が高く、好条件で売却できる可能性があります。また、相続税対策としても有効です。

今後の展望についてお聞かせください。

尾上 これからも古いものと新しいものの融合を追求し、地域に根ざした価値のあるリノベーションを提供していきたいと思います。古民家の特性を生かしながら、新しいデザインを加えることで、さらに魅力的な空間を創造していきたいと考えています。古民家のことなら、なんでもご相談ください。その際に当社ショールームに来ていただければ、どのようにリノベーションされるのかイメージがつきやすいと思います。ショールームにはカフェを併設していますので、コーヒーを飲みにでもお気軽にお越しください。

一覧に戻る